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年の初めに… トピックス
更新日 2012 年 02 月 08 日

あけましておめでとうございます。お健やかな新春をお迎えのことと心からお慶び申し上げます。昨年中、当院に賜りました数々のご厚情とご支援に対しまして、職員一同心より御礼申し上げます。 新しい年は、大震災、近年にない大水害など予測を超えた大きな災害、沢山の痛みを抱えたままの幕開けとなりました。「津波直後はまだ町があった。今はもう何もなくなってしまった。これが復興というものだろう」と空を仰いだ初老の漁師さんのお顔は忘れ難く、物心ともに受けた傷の深さに復興への長い長い道のりを感じました。

昨年秋、私たちは開院30周年の記念行事を多くの皆さんにお集まりいただいて開催することができました。30年前「ここに病院を作りたい」と先代に案内された場所は、幹線道路よりかなり奥まった、ちょっと小高い桑畑。昭和55年の秋のことでした。介護に多数の手を要する高齢者の入院には付き添いをつけることが必須という時代、付き添いがなくても入院できる病院をという願いを持っておりました。時代の逆風に煽られながらも今日まで運営してこられましたのは、本当に多くの方々に支えられたおかげです。

平成24年は介護保険、医療保険の同時改定の年。抱える問題は少なくありませんが、復興への財源不足は私たちの関わる医療福祉への影響も少なくないだろういわれています。 医療を受ける為の三大要素といわれる「アクセス(近いということ)」「コスト(だれでも罹れること)」「クオリティ(医療の質)」。これからは国民がすべての要素を満足することはあきらめなければならないと提唱している人がいます。昨年秋に野田総理大臣によって参加が表明されたTPPの介入によって、コスト、クオリティは更に格差が広がるだろうといわれています。他国から常にモデルとされて、守られてきた医療制度が形骸化していかないことを願うばかりです。

昨年11月ヒマラヤの小さな国ブータンの若き国王夫妻が来日なさいました。最後の桃源郷といわれ国民の97%が幸せと答えている国。報道によりますとその国にはGNP,GDPといった経済上の豊かさを表す指標とは異なる「国民総幸福量」という指標があるそうです。我が国において97%の幸福感は願わくもありませんが、せめて医療においては、新しい年もこの国に生まれた幸福感を感じ続けられることを新しい年を迎えるに当たって強く願いたいと思います。

昨年の暮れ、偶然ですが私は院内の駐車場の片隅、コンクリートで固められたボイラー室との隙間に一株の桑の株を見つけました。どうしてこんなところに・・・しばらくして30年前この地が桑畑であったことに結びついたとき、命のしたたかさ、たくましさを思い小さな感動を感じました。ベッドの上のご高齢の女の患者様は「笑わないでね、私はもっと生きたいのよ。あなた!手を貸して下さる?」と細い手を差し出して私の手を握られた時に似た感動でした。この新しい年、また職員共々命のつながりを肌で受け止めつつ、地域の医療の一端に責任をもって担ってまいりたいと思います。本年が少しでも豊かな年となりますことを願いつつ、新年のご挨拶と致します。  醫光会理事長 駒井 和子